大豆の有益性
●Soy Benefits
長年、菜食主義者や健康に関心のある人たちは、大豆タンパク質を豊富に含む食品は、牛豚肉や鶏肉などの動物食品の代替品になることを知っていました。近年、消費者は健康なライフスタイルを追求しており、大豆食品は健康にいいという科学的研究結果もあいまって、そうした食品の消費は着実に増加しています。昨年10月、食品医薬品局(FDA)は、大豆タンパク質の割合が高い商品に、心臓病の危険性を低下させると書いたラベルを貼付することを食品メーカーに許可しました。
以前に承認されたオートブラン(オート麦ぬか)や他の食品に対する健康強調表示のように、この健康強調表示も、消費者に大豆タンパク質の利点について確固たる科学的情報を提供し、"心臓を丈夫にする"献立を立てる手助けをしています。健康強調表示の承認で、食品メーカーは、さまざまな大豆商品を製造するようになってきています。("大豆の健康強調表示"を参照)
しかし、FDAが健康強調表示の規則を提案するとすぐに、大豆商品に含まれる特定の成分、特にイソフラボンに関心が集まりました。その結果、この規則についての論争が巻き起こりました。
DA管轄の食品の安全性と応用栄養学センターの主要栄養学者、エリザベス・A. イェットレー氏は、少しも驚きませんでした。「これまでに発表された食品の健康強調表示は、どれも論争になっています。健康的な食事と飽和脂肪の関係さえもです」とイェットレー氏は言います。
この論争は、ちょっと目には消費者を混乱させそうですが、この規制の背後にある根拠を注意深く探ってみると、あることがわかります。FDAは確固たる科学的リサーチを基に大豆タンパク質の健康的利点についての健康強調表示を認めていますが、この表示とそれに関連した問題との間には大きな隔たりがあります。これまでにわかっていることは、大豆を含む全ての食品は複雑な化学物質の集合体であり、多くの場合有益かもしれませんが、誤って使用すると有害になるかもしれないのです。そうした単純な事実のなかに、科学的ジレンマがあります。「データはいつ、ある食品が安全だと教えてくれるのか? また、いつ有害かどうか教えてくれるのか?」
科学者たちは、大豆タンパク質が豊富な食品は、心臓を丈夫にするためには非常に有益であるという事実を認めています。この事実は、対照グループを使った十数件の臨床研究で証明されています。1999年、FDAは、入手可能なヒト研究を一年にわたって再評価しました。その結果、25グラムの大豆タンパク質を含み、低飽和脂肪、低コレステロールの食事を毎日すれば、心臓病の危険性を低下させるかもしれないという食品ラベルの健康強調表示を許可しました。
「大豆自体は魔法の食品ではありません。しかし、補完的に摂取すれば健康によい影響をもたらす食品の例です」と、食品の安全と応用栄養センターの栄養商品・ラベリング・補助食品局の局長代理であるクリスティン・ルイス氏は言います。
今日までに実施されたリサーチの大部分は、豆腐や"豆乳"など丸ごとの大豆を使った食品や、食品に添加した大豆タンパク質としての食用大豆を調査してきました。そして、公衆衛生関係者は、おおかた、こうした大豆を丸ごと使った食品は健康的な食事に含める価値があると認めています。しかし、最近の関心は、丸ごとの大豆や完全な大豆タンパク質ではなく、大豆イソフラボンであるdaidzeinやgenisteinなど大豆に含まれる特定の成分に集中しています。こうした処方箋なしの錠剤や粉状で手に入る化学物質は、よく、ほてりなど女性の更年期の症状を軽減するサプリメントとして宣伝されています。
イソフラボンは,エストロゲン(卵胞ホルモン)を弱くした形状の植物ホルモンで、体内に薬物に似た効果をもたらす可能性があるため問題だと、研究者は言っています。この薬物に似た効果は、閉経後の女性に顕著に現れることがあり、いくつかの研究は、高いレベルのイソフラボンは、癌、特に乳癌の危険性を高めるかもしれないと示唆しています。しかし、リサーチデータは、結論を出すにはいたっておらず、いくつかの研究は、全く反対のことを言っています。つまり、ある条件下では、大豆は乳癌の阻害を助けるかもしれないというのです。これは、事実が有益性と危険性を同時に指し示すという科学的なぞなぞであり、研究者のなかには注意を呼びかける者もいます。
大豆イソフラボンに関する論争と違って、大豆タンパク質の有益性に関する事実は、より明白です。FDAが完全な大豆タンパク質を含む食品に健康強調表示を制限したのも、こうした理由からです。健康強調表示は、イソフラボンgenisteinやdaidzeinなどの大豆タンパク質から分離した成分には触れていません。
「書かれていることが全てではありません」と、タフト大学の準医学教授のマルゴ・ウッズ博士は言います。同博士は、閉経後の女性における大豆の効果を研究したことがあります。「たくさんのデータが出てきており、混乱を招いています。しばらくは、注意が必要です」ウッズ博士の関心は、主にイソフラボンサプリメントですが、丸ごとの大豆を薦めるほうが「気持ち的に楽です」と言います。「大豆(食品)には、何百という健康を守る成分が含まれていると思われます。しかし、錠剤に同じことができると考えるのは、ちょっと無理があります」。
FDAの国立毒物学リサーチセンターのエストロゲンノーレッジベースプログラム局長であるダニエル・シーハン博士も、大豆イソフラボンの摂取には注意を呼びかけています。FDAが健康強調表示を再検討している時に、FDAに提出した公文書のなかで、シーハン博士は同僚のダニエル・ドルジュ博士と共にこう書いています。「イソフラボンはある年齢や状況下では有益かも知れませんが、全ての年齢に有益であると考えることはできません。イソフラボンは、他のエストロゲンのように両刃の剣です。有益性でもあり危険でもあるのです」。
FDAは科学を基礎にした機関であるため、リサーチ情報は時間と共に変化し、新しい研究が完了すれば、現在ある混乱は解決されるだろうと考えています。「FDAは、引き続き、現在実施されている研究を監視していきます。新しいデータが提出されれば、それに応じて、自分たちの立場や人々に提供する助言を変更します。とても、責任ある仕事だと思っています」と、イェットレイ氏は言います。
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大豆の有益性
●Soy Benefits
大豆タンパク質を含む食品は、動物食品の代用になります。なぜなら、他の豆類と違って、大豆は"完全な"タンパク質の特徴を持っているからです。大豆は、ヒトの栄養に必須のアミノ酸を全て含んでいます。必須アミノ酸は、体内で合成できないので、食事を通して摂取する必要があります。大豆タンパク質商品は、他の食べ物で補完することなく、動物食品の代用ができます。動物食品も、完全なタンパク質を含んでいますが、大豆より脂肪、特に飽和脂肪を多く含む傾向があります。
外国、特にアジアでは、何世紀にもわたって大豆を幅広く使ってきました。一方、アメリカでは、大豆食品の広がりはニッチ市場の域を出ていません。アメリカでは、大豆は巨大な換金作物(すぐに現金になる作物)ですが、商品は主に家畜用飼料として使われています。
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