Q053
うつ病に効果的と言われる「認知行動療法」とは何ですか?
A053
A.心理療法のひとつです。
私たちの心や生活は、さまざまな要素の相互作用から成り立っています。たとえば、私たちは状況や他者(家族、同僚、友人など)と日々、影響しあいながら暮らしています。同様に、私たち自身においても、認知(頭のなかに浮かぶ考えやイメージ)、行動、気分・感情、身体は、つねに相互作用しあっています。認知療法・認知行動療法は、そのなかでも、特に「認知」と「行動」に焦点をあてながら進めていく心理療法です。
何かストレスに感じるようなことが起きたとき、私たちは必要以上に落ち込まないよう、認知や行動の修正を無意識のうちに行っています。しかし、うつや不安などで、心が元気でなくなってしまうと、そのような修正を一人で行うことができなくなってしまいます。認知療法・認知行動療法では、患者さんが、自分の気持ちを再び自分で立て直すことができるよう、さまざまな心理学的手法を用いて援助をします。
Q052
「難治性うつ病」は重症ということでしょうか?
A052
A.治りにくいからといって、重症とはいえません。
通常の治療では、なかなか症状が改善しない患者さんがいらっしゃるのは事実です。こうした場合、「難治性うつ病」と呼ばれることがあります。この言葉は、"重症"というイメージを持ちがちですが、必ずしもそうとは限らず、実は定義はいろいろです。「1種類の三環系抗うつ薬に反応しないもの」という比較的広く定義付けをしているものから、「2種類の抗うつ薬に反応しないか、1種類の抗うつ薬と通電療法に反応しない」、「最低2年間のうつ病相の持続」という条件を加えたものまであり、とても幅広い状態を含んでいるのです。
こうした「難治性うつ病」の原因としては、次のようなことが考えられています。
- 処方されている薬が多すぎて、副作用が出ている
- 他に身体的な疾患をもっている
- 実は、他の精神疾患だった
- 他の精神疾患を合併している
- 薬を指示通りに飲んでいない
- 職場や家庭の環境が厳しく、治療に非協力的
「難治性」とされた患者さんでも、比較的軽い症状を残しつつも、職場復帰をされている方もいらっしゃいます。悲観せず、前向きに治療に取り組んでいきましょう!
Q051
「自傷行為」とは何ですか?
A051
A.自分の手で故意に行われ、死に至ることがなく、社会的に認められない、身体を害する行為を自傷行為と呼びます。
自傷行為という言葉は範囲が広く、爪噛みやピアスなどよく見られるものから始まって、より重大なものまで様々です。死に至ることがない、というのはたまたまそうだっただけで、自殺企図がある場合も含みますし、自傷を繰り返すことで実際に死んでしまう場合もあります
なぜリストカットをするのかは人によって全く異なり、場合によっては正反対の理由で行う方もいます。例えば、現実感を取り戻そうとして行う方もいれば、逆に現実から離れるために行う方もいます。あるいは他の人に自分の辛さをわかってほしいために行う方もいれば、逆に自分だけの秘密を持つために行う方もいます。死にたいと思って行う方もいれば、生きるために行う方もいます。他にも意識をトランス状態に変化させるためだったり、疎外感や空虚感から抜け出るためだったり、自分がバラバラになっている感じをつなぎとめるためだったり、コントロールできないような感情を抑えるためだったりします。また、外傷体験を受けている方は、その外傷を「自分が悪いからだ」と感じて自分を責めるためだったり、その外傷� ��な場面を自分で能動的に繰り返すことで乗り越えようとする努力の表れであったりする場合もあります。
こうした様々な背景を持つリストカットですが、一つの共通する特徴があります。それは「他の方法では自己表現をすることが難しい」ということです。そのため、治療では、自傷行為以外の方法で自己表現ができるようにしていくことが、もっとも一般的です。
Q050
「通電療法」とは何ですか?
A050
A.かつては「電気ショック療法」などと呼ばれていました。現在は改良され、正式には「修正型通電療法」といいます。
通電療法は、1930年代に開発された、実はとても古い治療法です。今日のような形になるまでに、色々な改良がなされてきました。なかなか改善がみられないうつ病に効果があるとされています。
通電療法のしくみは、電極パッドを片側か両側の頭皮に貼り付け、脳に電流を流すことによって、神経伝達物質の働きを活性化させるというものです。以前は全身に痙攣を起こさせていましたが、現在の方法では、改良され、脳が痙攣と同様の反応を起こすだけとなっています。
Q049
糖尿病とうつ病の関係は?
A049
A.糖尿病患者さんを対象にした様々な調査で、糖尿病患者さんがうつ状態になっているケースが多いことが分かってきました。
ただし、全ての糖尿病患者さんがそうなるわけではありません。周囲に親身になって支えてくれるパートナーがいたり、仕事があり経済的な不安が少ない患者さんは、独身者や仕事がない患者さんよりも比較的うつ状態になりにくいとも言われています。
医師や周囲の人が、治療の大変さやこれからの不安など、患者さんが抱えるこころの問題を早く適切にケアしてあげることが、うつ状態にならないためには大切です。 おくすりによってうつ状態を改善するという方法もあります。これまで使われていたおくすり(抗うつ薬)の中には、糖尿病の病態に良くない影響を与えるものもあったのですが、数年前から日本で使用されるようになったSSRIという種類の抗うつ薬は、糖尿病の治療には悪影響を及ぼさないと考えられています。
患者さんにどのようなこころのケアが必要になるかは、医師が患者さんの状況をみて決めてくれます。
Q048
いろいろな"こころの病気"の原因となる「悩み」はどうして起こるのでしょう?
A048
A.自分の身の回りに起こる変化や環境に対応できないことから
悩みがうまれがち
身近な人々との関係や、自分の社会的な立場は、常に一定ではありません。良い変化もあれば、悪い変化もありますが、いずれにせよ、私たちは、周囲の環境の変化にさらされながら生活しています。
環境の変化に対しては、だれしもが多かれ少なかれ、心の負担を感じるものです。環境が変われば、自分も新しい環境に対応するために変化を迫られるからです。しかも、その対応は、いつもうまくいくとは限りません。うまくいかず、つまずくことも多くあります。そうしたつまずきを受け止めきれないとき、私たちの心には、不安がうまれ、強まっていきます。その不安が強まっていけばいくほど、逆に環境の変化が過剰に意識されるようになり、「うまくいっていない」というつまずき感が増強されてしまいます。
私たちは、ついつい、こうした"つまずき感"にとらわれがちですが、むしろ、こうした不安や恐怖はそのままに、その時点でできることを淡々とこなしていくことが、"つまずき感"をも減らすことにつながることが多くあります。
環境の変化にさらされがちなこの季節、目の前にある、できることをまずはやってみることから始めてみましょう!
Q047
「双極性のうつ状態(いわゆる躁うつ病のときのうつ状態)」は、「うつ病」と同じ薬で治りますか?
A047
A.基本的に、治療の仕方が違います。
躁とうつは、正反対の状態なので、薬も正反対のものを使うと思われがちです。しかし、双極性障害でのうつ状態は、気分が大きく上下に乱れた状態でのうつ状態なので、気分をもちあげる、というよりは、気分の波を穏やかにする目的で、気分安定薬という種類の薬を使います。
抗うつ薬を使った場合、気分が上がりすぎて、躁転してしまう可能性がとても高いのです。気分安定薬は、特効薬というほどではないにしろ、現在、双極性障害の治療と再発予防で効果が認められている、第一選択薬です(場合により、気分安定薬と抗うつ薬を併用することもあります)。
双極性障害は、単極性うつ病よりも再発率が高いため、効果のあった気分安定薬をそのまま継続して服用することが再発予防につながります。症状が落ち着いてからも、年単位で服用することが多いようです。また、薬をやめる場合にも、血液中の濃度を確認しながら、少しずつ服用する量を減らしていくことになります。
Q046
社会不安障害と社交不安障害は別のものですか?
A046
A.同じ疾患(病気)のことを指しています。
いずれも英語名でいうところの"Social Anxiety Disorder(略称:SAD)"を指しています。
日本では最近まで、英語名を直訳した「社会不安障害」という名称で呼ばれていましたが、「社会不安」という言葉には誤解も多いことから、2008年に日本精神神経学会において、より実態に近い表現の「社交不安障害」という名称に変更されました。
他人に悪い評価を受けることや、人目を浴びる行動への不安により強い苦痛を感じたり、身体症状が現れ、次第にそうした場面を避けるようになり、日常生活に支障をきたすことを、社交不安障害(SAD)といいます。
この社交不安障害は性格の問題ではなく、精神療法や薬物療法によって症状が改善することがある心の病です。ちょっと恥ずかしいと思う場面でも、多くの人は徐々に慣れてきて平常心で振る舞えるようになりますが、社会不安障害(SAD)の人は、恥ずかしいと感じる場面では常に羞恥心や笑い者にされるのではという不安感を覚え、そうした場面に遭遇することへの恐怖心を抱えています。
思春期前から成人早期にかけて発症することが多いこの病気は、慢性的になり、人前に出ることを恐れるようになると、「うつ病」等のさらなる精神疾患の引き金となることもあります。
Q045
非定型うつ病とはなんでしょうか?
A045
A.うつ病のひとつのタイプを言います。
ふつう「うつ病」といわれるのは、「定型うつ病」とか「メランコリー型うつ病」と呼ばれるもので、気分の落ち込み、意欲や食欲・集中力の低下、不眠などがおもな症状となります。
「非定型うつ病」は、この定型うつ病とはタイプの違うものを言います。定型うつ病とは症状のあらわれ方が違ううえに、対処の仕方も大きく異なるため、注意が必要になります。
非定型うつ病は、何か楽しいこと、望ましいことがあると、気分がよくなります。普通のうつ病(定型うつ病)では、何があっても元気が出ないのに対し、出来事に反応して気分が明るくなるのが大きな特徴です。
その他、下表にあるように、タ方になると調子が悪くなる、過食や過眠ぎみになる、などの傾向もみられます。定型うつ病では休養をとることが肝心ですが、非定型うつ病では、昼間は目的を持って活動することが、リズムの乱れを改善するために大切です。
Q044
「不安」はない方がいいのでしょうか?
A044
A.そんなことはありません。
不安とは、「明確な対象をもたない怖れの感情である」と定義されています。つまり、自分自身に漠然とした危険が迫り、自分がそれに対処できないかもしれないと感じたときに、生まれる感情です。
今までに不安な気持ちを一度も感じたことがないという人はいないはずです。不安は私たちが日常的に感じている感情で、人が生きていくための一種の防衛反応であるとも言われています。例えば、外出する前にふと不安になってドアのカギを確認し、鍵を閉め忘れていたことに気が付くということもありますし、女性は暗い夜道では不安を感じるために、なるべく一人で夜道を歩くことを避けたりします。このように、もし人が不安を感じなければ、私たちの生活に様々な危険が生じる可能性があります。
不安を感じると、私たちの身には、3つの反応が現れることがわかっています。ひとつは、身体的な反応、そして非常に強い不快感、最後に回避行動です。
こうした反応が起こりえることを知ることは、過度な心配をなくしたり、不適応的な行動を修正するのに役立ちます。
悪化高い収縮期または拡張期血圧が高いとは何か
Q043
「依存症」と「中毒」は同じ意味ですか?
A043
A.違います。
「依存症」は、心の空白を埋めたり、ストレスから逃れるために、何かに依存し、自分でもやめられなくなる状態のことをいいます。
それに対して、「中毒」は、悪い依存が続いた結果、肉体的・精神的に障害され、生きるのに耐えがたいような状態になることを指しています。
「依存」には、「良い依存」と「悪い依存」があります。私たちは、周囲と程よい依存関係を保つことで、主体的に生きることができています。つまり、相手を尊重しながら、お互いに助け合い、支え合っていくことができます。「依存」はそもそも、人間がうまれつきもっている、心の安心や肉体の満足を求める行為です。とことが、不安や孤独を紛らわすために、何かに頼ったり、相手を支配や束縛したりする「悪い依存」に陥ってしまうと、依存の対象である人や物から離れられなくなってしまうのです。これが「依存症」と呼ばれる状態です。
Q042
アスペルガー症候群は、非行や犯罪の原因になりますか?
A042
A.アスペルガー症候群そのものが非行や犯罪の原因になるわけではありません!!
いろいろな事件の報道などをもとに、アスペルガー症候群を非行や犯罪とじかに結びつけて考えてしまう人がいることは、残念なことです。
これは、大きな間違いなのです。アスペルガー症候群そのものが非行や犯罪の原因になることはありません。むしろ、こうした障害への無理解や偏見が、障害をもった人の居場所を奪い、非行や犯罪へと駆り立てる原因になっていることを理解しましょう。
こうした障害をもった人の中には、周囲の無理解や偏見から、ひどいしうちを受け、本来ならば味わう必要のない劣等感や悩みを抱きながら、それを打ち明ける場所がないことで、周囲への怒りを募らせる方もいます。また、アスペルガー症候群の特性によって、よくないつきあいに巻き込まれてしまう場合もあります。
周囲が障害について正しい理解をし、対応をすることによって、非行や犯罪を防げることは明らかなことです。
Q041
解離性障害はどんな病気ですか?
A041
A.従来はヒステリーと呼ばれていたものです。
解離とは「過去の記憶、同一性と直接的感覚の意識、そして身体運動のコントロールの間の正常な統合が一部、または完全に失われた状態」(ICD-10)とされます。
解離として現れる状態には、いくつかのパターンがあります。まずは忘れっぽくなることです。忘れることは誰にでもありますが、あまりに忘れっぽくなり、日常生活に支障をきたすことが出てきます。また、自分がどういう人間であるのか、子供の頃から歴史的にたどって、どういう生活を送ってきたのか、振り返ることが難しくなります。行動も一貫せず、他人にはその場その場で性格が異なっているような印象を与えます。
この状態が進むと「解離性同一性障害(多重人格)」といわれたりします。そして「離人症」といわれる状態があります。これは、現在自分が体験していることを活き活きと感じられなくなります。また他人と話をしても生気を感じられなかったり、フィルターを通して物を見ているように感じられたりします。こうした状態のうちどの症状が多く見られるかは、人によって異なります。
Q040
更年期障害でうつ病を併発することはありますか?
A040
A.あります。
女性は40歳を過ぎたころから卵巣の機能が低下し、それに伴って女性ホルモンの分泌が減少します。その結果閉経をむかえることになりますが、「更年期」とはこの閉経を中心とした約10年間をいいます。普通は45〜55歳ぐらいの年齢が更年期にあたります(人によって時期は異なります)。
この更年期のときにさまざまな症状がからだやこころに現れるのが更年期障害です。更年期の女性に特有の生活面からのストレス(子どもの自立、夫婦関係の変化、加齢による体力の衰え、近親者の介護など)によってうつ病を発症していくケースのほかに、単純に更年期障害で現れる抑うつや不安、不眠といった精神症状の悪化によって、うつ病になるケースもあります。
いずれにせよ、更年期の女性というのは、非常にストレスを受けやすい時期であるため、からだの変化と同じくらい、こころの状態にも十分に気を配るようにしなければなりません。更年期での気分的な落ち込みは、多くの女性が「更年期だから仕方がない」と考えがちですが、うつ病などの病気を発症している可能性もあるためできるだけ早く医師に相談するようにしましょう。
Q039
「非定型うつ病」はいわゆる「うつ病」とは違うのですか?
A039
A.違います。
ふつう「うつ病」といわれるのは、「定型うつ病」とか「メランコリー型うつ病」と呼ばれるもので、気分の落ち込み、意欲や食欲・集中力の低下、不眠などがおもな症状となります。「非定型うつ病」は、この定型うつ病とはタイプの違うもの。定型うつ病とは症状のあらわれ方が違ううえに、対処の仕方も大きく異なるため、注意が必要になります。
いわゆる「うつ病」と異なる「非定型うつ病」の特徴は、何か楽しいこと、望ましいことがあると、気分がよくなる、という点です。普通のうつ病(定型うつ病)では、何があっても元気が出ないのに対し、出来事に反応して気分が明るくなるのが大きな特徴です。その他、タ方になると調子が悪くなる、過食や過眠ぎみになる、などの傾向もみられます。また、いらいら感が強く、突発的に怒りの感情を表出したり、そのために周囲の人とのトラブルをかかえやすくなる、という特徴もあります。さらに、生体リズムに乱れが生じ、昼間遅くまで眠っていて、そのぶん夜目覚めている昼夜逆転が生じやすくなります。生活のリズムを整え、毎日、目的をもって生活することが大切です。
治療は薬物療法や心理療法が用いられます。
Q038
ナルコレプシーとはどんな病気でしょうか?
A038
A.ナルコレプシーは、過眠症の一種です。
日中の激しい眠気と、笑ったり驚いたりすると全身から力が抜ける情動脱力発作をはじめとする諸症状が現れます。発症は10歳代が多く、長期的な経過をたどるものの、経過とともに症状は改善する傾向がみられます。
ナルコレプシーの根治的な治療法は確立されていませんが、正しい診断と治療によって、ほぼ普通の日常生活を送ることができるようになります。
治療は、症状のコントロールを中心とする対症療法です。(1)夜間睡眠の十分な確保、昼間に適切な仮眠をとるなどの睡眠指導やライフスタイルの調節、(2)昼間の眠気と睡眠発作の解消、いわゆる「金縛り」(睡眠麻痺)などのレム睡眠関連症状の改善、熟眠障害の改善などを目的とした薬物療法が行われます。
Q037
「カウンセリング」と 普通の会話との違いは何ですか?
A037
A.カウンセリングと普通の友達との会話は違います。友達に愚痴を話してすっきりしたことはあると思いますが、そのことと同じではありません。
カウンセリングではカウンセラーの意見を押し付けることはありません。通常の相談の会話では何かのアドバイスを受けることがしばしばですが、カウンセリングにおいてはそのようなアドバイスは基本的にありません。むしろ自分自身で現在の状況をもう少しマシにするような建設的な行動を取れるにはどうすれば良いかを、自分で思いつくお手伝いというのがカウンセリングの主な作用です。
また、カウンセラーは、イライラしたり、ムッとしたり、話の内容に引いたり、「それは違うよ」と否定したり、憐れんだり同情したりしません。とりわけ重要なのは、どんな人がどんな話をしようが話をしに来る人を「好きになったり嫌いになったりしない」ということです。
では、カウンセラーはどんな心持ちで話を聞いているのかと言われると、それは「興味を持って聞いている」ということになります。
普通の会話とカウンセリングの違いは、「構造がしっかりしている」ということです。構造というのは耳慣れない言葉かもしれませんが、簡単に言えば自分の抱えている問題を何とかするための話の筋道が、良く通った会話になるということです。いらっしゃった方が話し上手であるなしにかかわらず、カウンセラーの技術によって、話の構造がしっかりするということです。
Q036
「強迫性障害」とはどんな病気ですか?
A036
A. 強迫性障害とは、不快な考えが頭に何度も浮かぶため、その不安を振り払う目的から同じ行動をくり返してしまう病気です。
手を何度も洗わずにはいられない(洗手強迫)とか、戸締まりを何度も確認しなくては気がすまない(確認強迫)など、誰でもたまには経験する行動なのですが、それが習慣的かつ非常にエスカレートして生活に支障をきたすほどの状態(手洗いが3時間も続く、出社できない、家族を巻き込む・・・など)が強迫性障害です。
そして、患者さんが自分の不快な考えについて「こだわりすぎだ」と判断できるにも関わらず、こだわらずにいられないことが特徴です。
以前は、強迫神経症と呼ばれていたのですが、"神経症"という概念が世界的に使用されなくなり、強迫性障害と呼ばれるようになりました。強迫性障害は英語でObsessive Compulsive Disorderというため、その頭文字をとってOCDと言われています。パニック障害や社交不安障害(社会不安障害)などの"不安"を主症状とする病気のなかまで、不安障害というカテゴリーに分類されます。
Q035
「自律神経失調症」とはどんな病気ですか?
A035
不規則な生活や習慣などにより、身体を働かせる自律神経のバランスが乱れるためにおこる様々な身体の不調のことです。
「自律神経失調症」の症状としては、体の一部が痛くなったり具合が悪くなったり精神的に落ち込んだり・・と人によって様々で、いくつか重なって症状があらわれたり症状が出たり消えたりする場合もあります。自律神経系の様々な種類の自覚症状なので症状のあらわれ方が非常に不安定なためです。また、遺伝体質、性格、ストレスの感受性により症状の出方も様々であると言われ、治療は心身両面から柔軟に行うことが必要です。原因は人によってさまざまと言われます(生活リズムの乱れ、過度なストレス、ストレスに弱い体質、環境の変化。ホルモンの影響・・・)。
Q034
うつ病の治療にハーブやアロマテラピーなどで癒される体験は役に立ちますか?
A034
うつ病も、ストレスなどがきっかけとなって引き起こされるものです。
したがって、リラックスをこころがけることは大切です。
しかし、うつ病は「脳内神経伝達物質のバランスの乱れ」による病気です。ですから、うつ病を治すためにはくすりによる治療が必要となります。
うつ病と診断されたら、ハーブやアロマテラピーなどのいわゆる民間療法に頼るのではなく、病院での治療に専念するほうが先決でしょう。これらのグッズの使用は治療の補助的役割、あくまでリラックスするための道具、として考えるのがよいでしょう。その際には、自分が「気持ちいい」「好き」と感じられるものを選ぶとよいでしょう。
Q033
治療薬で中毒になりませんか?
A033
「中毒」が意味するものは2つあります。
一般に「中毒」というと意味するのは大量の薬を服用したことによる「急性中毒症状」と「薬に頼ってしまう傾向(依存)」のことでしょう。
特に患者さまが心配されるのはむしろ後者のことが多いようです。幸いなことに抗精神病薬や抗うつ薬にには依存性はありません。
抗不安薬、特にベンゾジアゼピン系といわれている薬は発売当初は依存性はないと言われてきましたが、最近では弱い依存性があることが知られています。
急性中毒症状には意識障害や血圧低下などを起こしますが、特に問題になるのは抗躁薬(躁状態の治療に使われる)の炭酸リチウムやある種の抗てんかん薬で、有効治療量(症状に効果のある薬の量)と中毒量(急性中毒を引き起こす薬の量)が近いので大量に服薬すると急性中毒症状を起こしやすいと言えるでしょう。医師は血中濃度(血液中の薬の量)を定期的に測定しながら処方しています。
自殺の随伴症状は何ですか
Q032
アスペルガー症候群は大人になれば治りますか?
A032
アスペルガー症候群は、病気ではないので、"治る"ことはありません。
特性は一生残ります。しかし、適切な対応をとっていけば、成人するころには、目立った問題はなくなっていきます。目立った問題がなく、社会生活が送れることが、"治る"ということと同じ、と考えることができるかもしれません。
コミュニケーションの面、学習面、生活面など、さまざまな面に、アスペルガーの特性の影響は残ります。しかし、それらに対して、ひとつひとつ、本人に合った解決策を身につけていくのがよいでしょう。
Q031
"依存=悪いこと"なのでしょうか?
A031
依存には悪い依存と良い依存があります。
依存とは、人が生まれつきもっている、心の安定や肉体の満足を求める行為です。人間は誰しもひとりで生きているわけではありません。ですから、人にたよったり、ほしいものを得て心を満たすことは悪いことではないはずです。
良い依存では、主体性のある人間として、相手を尊重しながらお互いに支えあい、助け合います。相手とほどよい間合いを持てることが、良い依存の特徴です。こうした良い依存は、成長とおもに、自立へとつながります。
Q030
自閉症には、治療として薬物療法が用いられるの?
A030
薬物療法は、 基本的には用いられません。
発達障害の1つであるAD/HDには、薬物療法が有効なことがあります。おもな特性である多動性や不注意が改善します。
その一方で、自閉症には薬物療法の効果は期待できません。脳機能に対する治療にもなりませんし、コミュニケーションの障害やこだわりを軽減するのにも役立たないからです。 脳機能障害を改善する原因治療薬は、現在、まだ研究段階にあります。脳のどこにどのような作用をすれば、特製を軽くすることがでいるのか、研究が続いています。子どもに対する薬物療法は、その後の成長に影響を与える可能性があるため、大人の場合よりも、慎重におこなわれます。
自閉症の診断で薬を処方されるのは、二次症状がおきている場合に限られます。気分障害や不安障害などがある場合にのみ、薬物療法が用いられます。
Q029
アスペルガー症候群・高機能自閉症ってなに?
A029
どちらも自閉症の一種です。
アスペルガー症候群と高機能自閉症は、名前は異なりますが、その特徴はよく似ています。どちらも自閉症の一種で、起こりやすい問題は同じで、望ましい対応も同じ方法ですので、両者を区別しない専門家もいます。 この2つの障害は、自閉症の一種ですが、言葉や知的発達の遅れがなかったり、目立たなかったりします。言葉はうまく使いこなせるにも関わらず、抽象的な表現や他者の気持ちに想像を働かせることが難しいため、「自分勝手」とか、「無神経」と誤解されがちです。また、本人も、なぜ相手が自分と同じ考え方をしないのか、気持ちや会話、やりとりがかみあわないのか、悩んでいます。
まずは本人や周囲の人がその特性に気づき、 理解しなくてはなりません。本人が自分の特性や障害に気づけないままで、さらに周囲も理解できないままでいると、ご本人は周囲との摩擦に苦しみ、劣等感を抱いたり、引きこもってしまったり、攻撃的になったり、二次的な問題を引き起こしてしまいます。
まずは、正しい支援をする知識を持つことが、必要な障害といえるでしょう。
Q028
「心身症」と「仮面うつ病 」は同じものでしょうか?
A028
違います。
心身症は、心理的なストレスが身体に影響して身体的な障害が生じるものです。心の中で高じた緊張が、はけぐちとして身体を選び、症状を起こすと考えられます。 ストレスが関係している胃潰瘍や高血圧などは、その典型的なものです。
仮面うつ病も、身体的な症状のほうが強くあらわれるために、混同されがちですが、仮面うつ病は、身体には異常がありません。それにくらべ、心身症の多くははっきり異常が認められます。そのため、治療法も大 きく異なります。
Q027
こどものうつ病があるって本当ですか?
A027
小学校低学年のうつ病が急増、との報告もあります。
10年ほど前までは、専門家の間では、思春期のこどもはうつ病にはならない、との見方が一般的でした。しかし、現在では、こどものうつ病の存在をまったく否定することはできないと考えられています。
こどものうつ病でも、朝に症状が現れやすいという特徴は同様で、「学校にいきたくない」「おなかが痛い」などという訴えることが多いようです。そのため、親御さんは「なまけぐせ」ととらえて無理やり学校へ行かせようとしがちです。もしこのような訴えが長期間にわたって続く場合には、一度、専門医に相談してみるのもよいかもしれません。
Q026
うつ病の治療には、家族のサポートが大切と言われますが、それは何故 でしょうか?
A026
うつ病の改善に最も重要なのは、適切な治療と休養です。
治療は、病院に通院することで可能ですが、しっかりとした休養を取り、こころとからだを休めるには、周囲のサポートが欠かせません。そのため、協力を期待できる身内の人や同僚、友人などに患者さんの状況の理解をしてもらい、十分な休養がとれる環境を準備しなければなりません。患者さんが生活時間の大半を過ごす家庭での、ご家族のサポートは最も重要と言えるかもしれません。ただし、家庭でどうしても「何もせずにゆっくりと休む」ことが難しい場合や、ご家族も疲れきってしまっている場合には、入院治療も良い方法のひとつとなります。入院のように、「全てお任せ」といった環境に身を置く事で、こころおきなく休養することができると考えられます。
Q025
社交不安障害(社会不安障害)の症状はどんなものがありますか?
A025
周囲からの評価に敏感で、人前で恥ずかしい思いをしてしまうのではないかと常に、ひどく心配し、非常に苦痛を感じたり、社会生活に支障がでてきたりするようになります。
多くの人の前で話をすることや、人から見られたり注目されたりすることなど、人との接触場面での恐怖心が主なものです。また、そうした苦痛から身を守るために、極度に人とかかわらなければならない場面を回避するようになります。その結果、人前で、"自分が心配するようなことが起こらない"という経験ができず、ますます人との接触場面への恐怖を強めてしまう悪循環を招きます。また、社交不安障害(社会不安障害)の方には、こうした症状だけでなく、紅潮、発刊、震え、動悸、どもり、消化器症状など、さまざまな身体的症状が出現します。こうした症状も、不安を増強させるひとつの要因となります。これらのことから、学業、就職、婚姻などの社会生活に大きな問題を生じるようになってしまいます。こうした社交不安障害(社会不安障害)の治療には、身体症状を抑える薬や抗不安薬、抗うつ薬などの薬物療法と、認知行動療法などの精神療法を併用することが有効です。
Q024
強迫性障害のと通常の範囲の"凝り性""几帳面"の違いは?
A024
優先順位の逆転」について考えてみるとわかりやすいと思います。
まじめに慎重に、仕事や物事に取り組むことは、間違ったことではありませんし、むしろ、その慎重さによって、その人の能力が十分に引き出され、高いパフォーマンスを生むことができます。問題になるのは、その慎重さがバランスよく働いているかどうか、です。こだわりが強すぎて、本来の仕事や生活に支障が出たり、人間関係に望ましくない影響が出たりしている場合には、注意が必要かもしれません。例えば大切なプレゼンテーションのある日、事前に何度も原稿を読み直して入念に内容をチェックすることは、日常的にある確認行為ですが、何時間も原稿を読み直して、部屋から一歩も出られなくなるような極端な場合があれば、それは通常の"慎重"の範囲を超えているのではないでしょうか。この場合、何よりも優先されるべきは、プレゼンテーションを行うべき時間に行うことです。
Q023
自殺について話題にすることは、自殺の危険性を高めてしまうのでしょうか?
A023
誤解です。
自殺についてのよくある誤解の中に、「自殺について語る患者さんは滅多に自殺しない」そして、「自殺について患者さんと話をすると、自殺行動を引き起こしてしまう」といったものがあります。実際には自殺をする患者さんは、前もって何らかのサインを発していることがほとんどで、自殺をほのめかすようなときには、真剣に受け止めてあげることが周囲の人間の大切な役割となります。また、周囲の人間が、真摯に、患者さんの自殺したいという思いについて話を聴くことは、患者さんの不安感などの感情を和らげることにつながります。とはいえ、詰問やお説教、正論の押し付けなどは厳禁です。まずは自殺したいという患者さんの"思い"に寄り添って、じっくりと話を聴いてあげましょう。
Q022
"お酒に弱い人"がアルコール依存症になるのでしょうか?
A022
むしろ、その逆。
"お酒に強い人"の方が、アルコール依存症になる危険性は高いと言えます。
アルコール依存症は、ストレス発散などのため、とお酒を飲み始め、次第にお酒を飲むことに対するコントロールがきかなくなり、飲酒量や回数がどんどん増えて、身体や精神依存を生じます。そして、ついには身体症状や精神症状が現れるようになってしまいます――アルコール依存症になるまでには、通常何年もかかりますが、お酒を飲む人すべてがアルコール依存症になるわけではありません。アルコール依存症になりやすいと考えられる体質があるのです。 一般に「お酒に強い」と言われる体質の人、つまり、アルデヒド脱水素酵素の働きの強い人が、アルコール依存症になりやすいと考えられます。なぜなら、お酒を飲んでも顔色は変わらず、たくさん飲んでも体調に変化がないため、気がつかないうちに大量摂取をし、結果として依存症になる危険が高いからです。 いずれにせよ、「百薬の長」といわれるお酒は、それだけ人間の身体や精神に強い影響を与えるもの。ストレス発散や睡眠導入剤代わりに使用するのはやめましょう。お酒は楽しんで、ほどほどに。
Q021
うつ病から躁状態になることがありますか?
A021
単極性うつ病(いわゆるうつ病)と双極性障害 (躁うつ病)との鑑別は困難です。
初発時に単極性うつ病と診断されても、治療の途中で躁状態に転じて初めて双極性障害として認識される場合があります。 また、単極性うつ病の場合でも、回復期に軽いそう状態を示す患者さんは少なくありません。このときの躁状態の怖い点は、ようやくトンネルの出口が見え始める回復期にあって、患者さんは、「本来の自分を取り戻した」との思いから、病的なものと思わず、周囲も油断して注意を払わないことがある、という点です。この時期の軽い躁状態は、本人の望むようには続かず、やがてエネルギーを使い果たし、うつ状態に逆戻りすることが多くあります。このとき、患者さんの絶望感は非常に強いものとなります。自殺の危険も増しますから、注意が必要です。躁転した場合は、速やかな薬物療法での対応が必要になります。
医師の種類は、肺がん患者を扱います
Q020
「こころ」の病気の治療を経て、就職を考えるとき、就職するための条件 としては、
どのようなものがあるでしょうか?
A020
もちろん、ケースバイケースのことではありますが、以下のようなことを目安に されると良いのではないでしょうか。
- 服薬・通院の必要性をご本人が納得していること
- 生活のリズムができていること
- 一定の体力・持続力があること
- (作業などに)一定の正確さがあること
- 職場の人間関係のストレスにある程度は耐えられること
- 職場のことなど、困ったときに相談できる人がいること
仕事を探す際には、最初からフルタイムの勤務ではなく、パートや アルバイトなどの短時間での勤務から始めるのが良いのではな いでしょうか。また、一度、就職に失敗したからといって、がっかりしすぎないことも大切です。その失敗から、どういうところが自分のウィークポイントなのか、をはっきりさせれば良いのです。「勤務時間が長すぎて疲れてしまった」とか、「若い人のいる職場は苦手だった」とか、「午後からの仕事に強い」とか。そういったことを相談相手と一緒によく考え、次に活かすことが成功につながります。
Q019
パニック障害と社交不安障害(社会不安障害)の違いは?
A019
パニック障害は突然、何の理由もなくパニック発作が起こるのに対して、社交不安障害(社会不安障害)ではその人が恐れているような"特定の状況"に対して、激しい不安感に襲われ、動悸、震え、発汗、胃腸の不快感、下痢、緊張、紅潮、混乱などのさまざまな症状が現れます。 "特定の状況"に強い不安を感じながらも、何とか耐え忍ぼうとすることもありますが、多くの場合がそのような状況を避けるようになります。そのため、学校や仕事などの生活面に大きな支障をきたすようになります。社交不安障害(社会不安障害)は、このように"特定の状況"によって、その人の社会機能が障害されるほど恐怖感が極度になっている状態をいいます。
Q018
パニック障害の発作(胸の痛み)と心臓の病気の見分け方は?
A018
自己判断は危険です!
パニック障害も、心臓の病気も、早期に治療を受けることが必要な病気ですから、自己判断せずにまず病院できちんと検査を受けることが大切です。 普通、心臓の病気であれば心電図の異常がみられます。また、発作が起こっている本人では、正確に状況を把握できないことが多いと思われますが、医師が発作の状況を聞くことでパニック発作に特徴的な胸の痛みであるか、心臓の病気によるものかをある程度把握することができます。
パニック障害での発作の特徴をあげるとすれば、発作の症状が同時に現れず、短い発作の期間内に症状が順々に現れるということです。例えば、発作の初期にはめまい、ふらつき、胸痛、動悸など、中期には呼吸困難、身震い、窒息感、吐気、紅潮または冷汗、そして終盤には知覚異常、発狂したくなるような感じ、死への恐怖という順番で症状が現れます。 どちらにしても、理由も分からずに胸が痛くなったり、息が苦しくなったりする場合は、医師に相談するようにすると良いでしょう。早期発見につながります。
Q017
「こころの病」を予防するには?
A017
"積極的休養"で心身をリフレッシュしましょう。
私たちは、どうしても「眠って休む」ことより、「起きて働く」ほうに価値をおきがちです。しかし、眠って休むからこそ、起きて働けるわけで、休養することには重要な意味があるのです。休むことを怠けることと捉え、無理を続けていると、どんどん疲労がたまり、心身の健康を害してしまいます。
更に、休日や余暇には、身体を休めるだけの休養のとりかた(消極的休養)だけではなく、精神的な疲労を解消するために、運動をしたり、趣味の時間をもったりして、仕事以外のことに夢中になりながら活動的に過ごす「積極的休養」が必要です。変化のある休日や余暇を過ごすことでストレスを解消し、心身をリフレッシュさせるのです。
Q016
最近、ドラマなどにもよく取り上げられる「自閉症」とはどんな障害ですか?
A016
自閉症は生まれつきの障害で、完全に治ることはありません。 自閉症の人は、見たり聞いたりすることや感じることを普通の人と同じように 理解することができません。 このため、人と関わることや、自分の気持ちを伝えたり相手の気持ちをくみとる ことがとても苦手です。行動も自分勝手に見えることがあります。
自閉症の現れ方は、人によってそれぞれですが、おおよそ次のような特徴が挙げられます。
- ことばの発達が遅れる
- 人とのかかわり方が分からない
- 感じ方に一貫性がない
- 知的機能が偏って発達する
- 活動と興味が限られる
自閉症を理解するときに、絶対に忘れてはならないのは、自閉症は生まれつきの脳の障害であって、決して心因性の情緒障害ではない、ということです。 自閉症の人は、特別な訓練を受けた教師によって、個別指導を重視し、かつ特別に構造化されたプログラムを用いた教育を受けることにより、家庭や地域社会で暮らすためのスキルを習得することができます。自閉症の人の中には、ほとんど普通の生活ができるようになる人もいます。
Q015
ADHDとはどんな病気でしょうか?
何でしょうか?
A015
授業中、集中できずにごそごそ動き回ったり、ボーっとして忘れ物が多かったりする子どもは、「問題児」ということで、本人の性格、家庭環境や親のしつけの悪さのせいにされ、親や教師の努力だけで対応される傾向にありましたが、最近、注意欠陥多動性障害(ADHD)という脳の病気があることが知られるようになり、一般小児科外来を受診されるケースも徐々に増えてくるようになりました。
同じ年齢や知能指数の子どもさんと比べて、自分の行動や感情をコントロールする力が弱いために、不注意、多動性、衝動性の症状があり、日常の生活が障害されます。大きく分けて、多動・衝動性が主なタイプと不注意が主なタイプの2つがあります。知能には問題なく、自分の興味あるものには非常に集中することができます。7歳になる前に明らかになり、男子に多く、思春期になると改善する傾向があります。乳幼児期のことを振り返ると、寝かせるのに苦労した、夜泣きがひどかったなど、既にその兆候に思い当たることもあります。
ADHDという状態は単に親の育て方や家庭環境、持って生まれた性格だけではなく、脳の異常によって起ることを知ることが大切です。ADHDの子どもさんは、親や教師、友達にも認められず、みじめな思いをしていることがあります。その思いが、いじめ、不登校、非行、家庭内暴力につながっていくと、その子の今後の人生に大きく影響するので、早い時期に治療を始めることが大切です。
Q014
"大食い"と病気としての"過食症"との違いは
A014
過食症(ブリミア・ネルヴォーザ)は、食欲と体重の自己制御をめぐる病理です。過食症の患者さんは、自己制御不能な感覚に襲われて大量に食物を摂るという行為を繰り返します。
過食症における「無茶食いをしたい」という衝動は、ご本人にとって抵抗することのできない、発作的な衝動として現れます。無茶食いの後には罪悪感、抑うつ気分や後悔、自己嫌悪などを伴い、たいていの場合、無茶食いをしている最中でさえ、快感はありません。この「制御のできなさ」「無快感性」が、過食症を"大食い"と区別するひとつの指標であるといえます。
過食症の患者さんは、苦痛に耐えながら無茶食いをし、もうこれ以上は食べられなうという限界の時点で、嘔吐を自己誘発します。多くの場合、この嘔吐は、カタルシス的な爽快感を伴います。そして、この無茶食いから嘔吐に至る間、日常生活での憂さや自己不全感などを忘れることができます。
過食症は圧倒的に女性に多く、10代後半から20代前半に発症するといわれていますが、比較的予後が良いとされています。
Q013
"ストレスに強い"人格はどのようなものでしょうか?
A013
ある出来事をストレスと感じるのは、個人の主観が多く関わっていて、同じ出来事を経験しても、ストレッサー(ストレスを生じさせるもの)としての感じ方は個人によって異なり、ストレス反応にも、個人差があります。
"たくましい人格"の人はストレス反応を起こしにくく、健康でいられることが、過去の研究からわかっています。
"たくましい人格"は、
- "遂行"(受身にならず、目的を持って積極的に物事に関与していく人格特性)
- "挑戦"(逆境をも自分の成長の糧と考え、立ち向かっていく人格特性)
- "統制"(困難な状況にあっても無力に感じず、その出来事に変化をもたらすことができると考える人格特性)
の3つの要素から成っていると考えられています。
Q012
精神科の薬には依存性があるというのは本当ですか?
A012
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬には、依存性があるとされていますが、本当に依存まで進む方は、非常に稀です。
むしろ、アルコールやタバコの方がはるかに依存性は高いと考えられ、発がん性など、身体への害は大きいのではないでしょうか。「睡眠薬は癖になるので、お酒を飲む」という患者さまがいらっしゃるようですが、アルコールを睡眠薬代わりにするほうが、よほど危険です。
精神科の患者さんには、非常に長期に服薬する必要がある方がいらっしゃいます。それは、病気の再発を予防するには、服薬の継続が必要だからです。服薬を自身の判断で中断すれば、再発の可能性は飛躍的に高まります。また、依存性、ということで言えば、薬物の作用そのもの、というより、「この薬がないと私がだめになってしまう」という思い込みとしての依存性は何の薬でも、たとえ偽薬であってもあるでしょう。
「薬に頼りながら生活するのはいやだ」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、精神科の薬は"頼る"ものではなく"利用する"もの、との認識をもっていただければ、と思います。
Q011
境界性人格障害にはどのような治療が効果的なのでしょうか?
そもそも、 人格障害は治るのでしょうか?
A011
安定した対人関係がなかなか築けない境界性人格障害の患者さんですが、集団療法、作業療法、デイケアなどといった治療枠内での他者との交流には、思いのほか適応できることがあり、より現実的行動上の問題を取り上げて、習慣的な対人行動様式の病的なパターンの自覚を促す個人精神療法との併用が有効です。
薬物療法としては、抗精神病薬や抗不安薬などが、患者さんの不安の軽減や感情の安定に有効とされています。一般に人格障害の治療には多くの困難と長い時間が必要とされます。しかし、人格は、これまでの生活の中で形成されてきた、環境に適応するための様式です。ですので、比較的安定してしまっているとはいえ、様々な働きかけによって変化が期待できないものではないことを忘れないで下さい。
Q010
すでに勤めていて心の病を発病し、復職しようとする場合、気をつけること
はありますか?
A010
職場の上司や人事担当者を含め、職場側と患者さん本人、医師やワーカーで、復職前によく話し合うことが重要です。
そして、その場で、どれだけ病気のことを職場側に理解してもらえるかがポイントです。病気のことがばれるとまずいと思って、充分に情報を伝えないと、職場側は不安をもってしまってうまくいきづらくなります。病名を直接(ダイレクト)に伝える必要があるわけではありません。どういう仕事内容なら向いているのか、どういう点が弱点で、調子を崩しやすいか、薬はどうして飲んでいなければならないか、など、よくわかってもらうことが必要なのです。
Q009
統合失調症の急性期状態に、薬はどのように効くのか?
A009
急性統合失調症状態には、ドーパミン受容体が働きすぎの状態が存在します。
私たちの脳内では、神経伝達物質というものが、神経細胞と神経細胞の間を行き来して、情報をやり取りしています。例えば神経細胞Aから神経細胞Bにむかって物質が放出されるとき、物質の受け手側であるBには、その物質を受け取るためのミットのようなもの(受容体)が用意されています。統合失調症の急性期では、このミットが、過剰に増えてしまっており、そのために、細胞Aから細胞Bへの情報伝達が、過剰になってしまい、余分なものまで伝達されてしまっています。このことが、幻覚や妄想といった陽性症状が生じることと関係していると考えられています。
抗精神病薬は、この余分なミットに「ふた」をすることによって、ちょうどよい量の物質だけがやり取りされるように調整する働きをするのです。そうして、幻覚や妄想を鎮めています。
Q008
強迫性障害とはどんな病気でしょう?
A008
強迫性障害とは、不快な考えが頭に何度も浮かぶため、その不安を振り払う目的から同じ行動をくり返してしまうといったような症状を主なものとする病気です。
手を何度も洗わずにはいられないとか、戸締まりを何度も確認しなくては気がすまないなど、誰でもたまには経験する行動なのですが、それが習慣的かつ非常にエスカレートして生活に支障をきたすほどの状態が強迫性障害です。そして、患者さんが自分の不快な考えについて「こだわりすぎだ」と判断できるにも関わらず、こだわらずにいられないことが特徴です。以前は、強迫神経症と呼ばれていたのですが、"神経症"という概念が世界的に使用されなくなり、強迫性障害と呼ばれるようになりました。 強迫性障害は英語でObsessive Compulsive Disorderというため、その頭文字をとってOCDと言われています。治療法としては、SSRIを用いた薬物療法と認知行動療法を組み合わせることが、有効といわれています。
Q007
「睡眠不足」の目安は?また、スムーズに眠るためにこころがけるべきことは?
A007
日中の眠気が非常に強い、また平日と比べて週末に3時間以上長く眠らないといられないようなら、睡眠不足、と考えても良いかもしれません。成人の場合、6〜7時間が睡眠充足の目安と言われています。また、加齢とともに、必要な睡眠時間は減少していきます(70歳を超えると、平均6時間弱とのデータも示されています)。
スムーズに眠りにつくためには、まず、就寝時間にこだわりすぎないこと。なかなか寝付けないときは、いったん床を離れてリラックスし、眠くなってからもう一度床に就くようにしてみましょう。そして、就寝時間にかかわらず、同じ時刻に起床することを心がけます。また、就寝前は刺激物の摂取を避けましょう(具体的には、就床前4時間のカフェイン摂取、1時間の喫煙は厳禁です)。規則正しい3度の食事、規則正しい運動習慣も良眠のために役立ちます。
日中の眠気を解消するには、短時間の昼寝が有効です。特に、昼食後から午後3時までの間の昼寝は夜間の睡眠に悪影響を与えずに日中の眠気を解消します。ただし、30分以上眠ると、身体も脳も眠る体制になってしまうため、却ってぼんやりしてしまい、逆効果です。
睡眠の問題で、仕事や学業など、生活に支障がある場合には、医師に相談してみましょう。医師の指示のもと、一時的に睡眠薬を服用することも、良い方法です。現在使用されている睡眠薬は、正しく使えば、安全なものです。薬が処方されたら、医師の指示を守って、服用しましょう(自分の判断で薬の量を調節したり、服用を中断したりすると、効果が得られないことがあります。また、法律によって禁止されていますので、睡眠薬を他人にあげたりしないで下さい)。
Q006
パニック障害とは、どんな病気か?
A006
突然、激しい不安に襲われ、胸がドキドキしたり、息が苦しくなったり、めまいがしたりする発作(パニック発作)が繰り返し起こる病気で、100人中1〜2人に見られる病気です。
パニック発作が何回も起こると、「また発作が起こるのではないか」、「外出先で発作が起きたらどうしよう」などという不安が強くなっていきます。そのために、以前発作が起きた場所や、電車の中など、発作が起きたときに逃げられないところを避けるようになります(回避行動)。そのために日常生活がスムーズに送れなくなってしまいます。また、憂うつな気分が続くこともあります。
パニック障害は、気のせいや、性格の問題ではなく、身体的に原因のある病気です(脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることによって起こると考えられています)。ですから、治療によってなおります。できるだけ早期に、適切な治療を続けることが大切です。
治療は、まず、脳内の神経伝達物質のアンバランスを調節するために、坑うつ薬でパニック発作をコントロールすることから始まります(パニック障害の治療薬は、飲み始めて数日から効き始め、1〜4週間するとはっきり効果が現れてくるのが普通です)。そして薬物療法により、パニック発作が起こらないことを実感した上で、それまで避けていた状況や場所に徐々に挑戦する治療を行うのが一般的です。 パニック障害を乗り越えるためには、次の4点を心がけることが大切です。まず、ご自分の病気を良く知り、積極的に治療に取り組む姿勢、次に、パニック発作を恐れないこと(パニック発作はとても辛いものですが、決して死ぬことはありません)、発作は必ず去ることを忘れないこと、そして、医師の指示をしっかりと守ることが何にも増して重要です。間違った判断で治療を中止すると、病気が長引いたり、再発につながります。
Q005
精神科で入院治療の長所と短所とは?
A005
精神科入院治療の長所・短所には、次のようなことがあげられると思います。
まず長所ですが・・・
- 時間をかけた診療が行われ、速やかな対応ができます。外来では難しい薬の調整が容易になります。
- 危険を防止し、保護することができます。
- 保証された環境で心身の休養をとることができます。また、規則正しい生活と服薬の週間をつけることができます。
- 治療への積極的な参加を促すことによって、治療期間が安定します。
- スタッフや他の入院患者との交流を通して、孤立感を癒し、対人関係を見つめなおすことができます。
- 家族が安心して休養をとることができます。入院期間中に、治療の見通しや病気の説明を詳しく聴いて家族の関わり方を検討することができます。
逆に短所としては、ご本人の意志に反した入院の場合や、状況をよく理解できない場合などに、ご本人がこころの傷をもつことが考えられます。また、あまりに長すぎる入院生活は、家庭に戻ったり、社会生活を再開するのに支障をきたすことが多いと言えます。
入院の方針は、これらの特徴をよく考え合わせた上で決定されるのは、もちろんのことです。主治医との相談が大切です。
Q004
精神科の場合、どのようなときに入院が必要と判断されるか?
A004
精神科では、主に次のような場合に入院が必要であると判断されます。
1)不安・焦燥・抑うつなど、本人の苦痛がひどく、休養が必要な場合
2)興奮や不穏状態のため、本人の保護が必要な場合
3)幻聴や被害妄想の時、病的体験に支配された行動を防ぐ必要がある場合
4)意欲や自発性の低下が長引く場合
5)家族内の葛藤が病気に悪影響を与える場合
※Q005.も参照してください。
Q003
家族が「うつ病」と診断されたら?
A003
- 「頑張れ」との励ましは逆効果
"頑張りたくても頑張れない"ことがうつ病の人の状態です。ですから、「頑張って」という励ましの言葉は、余計 にご本人を追い込むことになります。「大丈夫」「治る病気だ」と、温かく接することが何よりの励ましになるのです。 - 外出や運動を無理にすすめないこと
気分転換のためにと、スポーツに誘ったり、旅行や外出に連れ出すことは避けましょう。それがうつ病の人にとってはかえって苦痛になってしまうので、無理強いは禁物です。日常生活に自発性が見え始めたら、少しずつ、提案しても良いでしょう。 - 通院に付き添い、受診に同席しましょう。
医師より多くの情報を正確に伝えるために、できるだけ受診に同席しましょう。また、受信に同席することは、うつ病への理解につながります。 - 服薬の援助をしましょう
症状がよくなったり副作用への不安から、自分の判断で服薬を中断してしまう人がいます。周囲の人は、服薬の継続のサポートをしてあげて下さい。 - 考えや決断の手助けを
うつ病の症状の特徴に、「決断しにくくなる」というものがあります。例えば日常生活において、「何を着るのか」「何を食べるのか」といったことが気軽に決めにくくなります。周囲の人から提案をしてあげましょう。 - 家事などの日常生活の負担の軽減を
うつ病の人は、真面目で責任感が強い人が多いものです。周囲の人が家事などを手伝い、本人の負担を軽減してあげましょう。 - 回復後の再発に注意する
正しい治療を行っても、うつ病は再発する可能性が低くはありません。最初にうつ病を発症したとこと似た状態が生じたら、迷わず専門医に診断を仰いでください。
Q002
「うつ病」は「落ち込み」とどう違うの?
A002
日常生活でも気分が落ち込むことはよくあることです。
例えば、失恋をしたり、仕事で大きな失敗をしたりすると、気分は落ち込みます。しかし、多くの場合、数日で回復し、またもとのように「頑張るか!」という気持ちを持てるようになります。
ところが、いつまでたっても気持ちが沈んだまま、回復せずに、2週間以上もこのような状態が続くような場合には、うつ病の可能性が疑われます。また、落ち込みの程度はいつも同じではなく、多くの場合、朝に重く、夕方になると軽くなる傾向があるようです。
このように、1日の中で気分の落ち込みに変化があることも、うつ病の特徴の1つに挙げられます。
この他、悩み事や心配ごとがあって眠れなかった経験のある方も多いと思います。不眠はうつ病の代表的な症状の1つですが、うつ病の場合は、早朝から目覚めてしまう、といったことも多いようです。 このように、単なる気分の落ち込みとうつ病には、いくつかの点で異なります。
Q001
「うつ病」は、気のもちよう?
A001
違います。
周りの人に、「ゆううつな気分だ」と訴えると、「気のもちようだ」とか、「こころの弱いやつだ」とか、「気にしすぎだ」といわれることがあるかもしれません。
しかし、うつ病には、脳内の神経伝達物質の働きが低下して活力不足となり、ゆううつな気分に襲われるため、単なる気の持ちようではなく、専門的な治療が必要となります。
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